IoTの次なる一手Sponsored
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これまで不動産管理会社が賃貸物件の“内覧業務”をする際、行わなければならなかった「物件の鍵の受け渡し」。この手間は、繁忙期だと機会損失になることも多く、セキュリティ面でも紛失などの不安があった。

それらの課題を解決しようと、リクルートテクノロジーズはIoT技術研究の一環として独自の不動産業者向けのキーレスエントリーシステムを開発。玄関ドアにリクルートテクノロジーズ製オートメーションキーを取り付けるだけで、スマホで鍵を解錠/施錠できるという。

また中継器を利用すれば、PCを通じての遠隔操作による解錠/施錠も可能。不動産管理会社にとって業務効率化やセキュリティ強化に役立つ画期的なキーレスエントリーシステムの登場である。今回、本キーレスエントリーシステムの開発担当であるリクルートテクノロジーズの菅原健翁氏に話を聞いた。

IoT技術の実用性を追求し独自開発

近年の技術開発において注目が集まるIoT。菅原氏が所属するリクルートテクノロジーズの研究開発機関、アドバンスドテクノロジーラボでは、IoT技術を日常生活や業務など、より身近な領域に活用することを目指し、研究開発に取り組んできた。

たとえば、同社の開発した女性向けリストバンド型ウェアラブルデバイスもそのひとつ。このウェアラブルデバイスはアクセサリーのようなデザインを特徴とし、スマートフォンの着信やチャットのメッセージなどがLEDや振動によって通知される。手が離せないときでも、手元につけたアクセサリー感覚のウェアラブルデバイスでスマートにお知らせを受け取れるといったものだ。

また、センサーによって体の動きや声を認識できるシステムKinectを活用して、プロジェクションを通した注文や店員との会話ができるシステムや、スマートグラスと顏認識機能を組み合わせたシステムで、お客さんが来店すると、カメラの顏認識機能で検知して、顧客の登録情報が瞬時にわかり接客に活用できるといった近未来のレストランを体現した体験イベント「未来レストラン」の主催など、次世代技術や新ソリューションの開拓に積極的に取り組んでいる。

菅原氏は、IoTの可能性について、「既存のモノや道具に通信機能を付加することは、人々の行動や生活スタイルをデータ化できるということ。そうして集めた多くの人々の行動ログがビッグデータとなり、処理・分析することで、新たな知見が蓄積され、現在の“不”を解消できる新しい機能やアクションへと繋げることが可能となります。ビッグデータの活用を具現化することが可能となるIoTの市場は確実に伸びていくでしょう」と語る。
 
そのような中で、今年1月から試用開始となったのが、リクルートテクノロジーズが不動産管理向けに開発したキーレスエントリーシステムだ。これは、玄関ドアのサムターン(玄関ドア内側の鍵を解錠/施錠するツマミ部分)の上に被せるように機器を取り付け、電動で物理的にツマミを回す仕組み。これにより、スマートフォンアプリを使って玄関ドアの解錠/施錠ができるようになる。通信方式はBLEを用いているが、中継器を使えば、Wi-Fiや3Gによる遠隔操作も可能である。


リクルートテクノロジーズ製 オートメーションキー

「今回のキーレスエントリーシステムは、従来の製品のように住宅の居住者向けとしてではなく、あくまで不動産管理業者専用のものとして開発しました。これは、賃貸物件管理に関わる課題を解決する上で、IoT技術が非常に有用であると考えたためです。賃貸物件を探す際、契約前に“内覧”を行いますよね。そのとき、仲介会社は部屋の鍵を保管しているところまで取りに行き、内覧後返却するという手間がありました。本システムなら、鍵を持たずに玄関ドアを解錠/施錠できるので、鍵の授受にかかる時間が不要となり、業務効率が大幅に改善されます」

実際、賃貸物件を扱う不動産業者の現場では、鍵を受け渡す手間やその管理に悩む声が多く、開発途中の段階で大東建託株式会社がプロジェクトに賛同。2016年1月12日より同社グループが管理する集合住宅1棟での試用を開始した。

デジタル管理の実現により、セキュリティ面も向上

不動産管理の業者用に作られたシステムだからこそ、菅原氏は以下のことに注力したという。

「開発でこだわったのは、賃貸物件の管理業務で求められるニーズに徹底的に応え、“本当に使えるもの”を作ることです。具体的な工夫としては、特別な工事をせずとも簡単に取り付けられ、外した後にもキズや跡が残らないことなどが挙げられます。賃貸物件の空室の入れ替りは激しいため、装置を何度でも使い回せることも、複数の賃貸物件を管理する立場からすれば重要なポイントです。そのため、さまざまなサムターン(玄関ドア内側の鍵を開け閉めする「つまみ」)の形状に対して、オプションパーツなども必要なく対応できる構造にするなど、実際の物件に何度も足を運びながら、試行錯誤を繰り返しました」

キーレスエントリーシステム不動産管理業者専用

実際に使用する際は10秒程度で玄関ドアに設置することができ、取り外す場合に至っては、2秒もかからないという。また、他製品では対応できなかったサムターンタイプにも対応するなど、物件の空き状況に応じて頻繁に装置を付け替えたい不動産業者にとって、ストレスの少ないシステムを実現している。

また、業務で利用する以上、「省電力」も重要なテーマであった。電源やBLEの発信ロジックの最適化により、装置の連続待ち受け時間は、2年となっている。

「パソコンなどの開発においては、電力消費を気にせず、とにかくハイパフォーマンスを追求することがありますが、このシステムは真逆。省電力を突き詰めるという、ある意味では“昔ながら”の開発手法となりました」

鍵の受け渡し作業がなくなり、効率化をもたらすキーレスエントリーシステム。中継器を使えば遠隔操作による解錠/施錠も可能であるため、例えば「内覧希望者の急な要望で、立ち寄る物件が増えたとしても、物件管理会社に電話すれば、案内担当者のスマートフォンにその物件の鍵が設定されていなくても、遠隔操作で玄関ドアを解錠してもらえる」といった使用方法も考えられる。

さらに、業務の効率化だけでなく、セキュリティ面のメリットも存在するという。

「このシステムでは不動産管理者がつねに『誰がどの部屋を開けられるか』をパソコン上で一元管理することが可能です。そのため、管理者が許可した人以外は、鍵を操作することはできません。また、解錠/施錠の記録もすべて履歴がデータとして残ります」

解錠/施錠の履歴がサーバー上に残れば、内覧後に鍵を閉め忘れていないかチェックすることも可能になる。また、たとえ不動産の案内担当者がスマートフォンを落としてしまっても、管理者がそのアカウントを無効にすることができるため、盗用の心配もいらない。

そんな不動産業界の課題解決に特化したキーレスエントリーシステムだが、今後の展開としては、内覧以外の用途も視野に入っているようだ。

「シェアハウスやレンタルルーム、あるいは民泊など、複数の人が鍵を使用したり、期間限定で玄関ドアの解錠/施錠をしたりという場合に、このキーレスエントリーシステムを活用できると考えています。鍵の盗用や紛失の心配がなくなり、安全性や効率性の向上に寄与できると考えています」

家の外にいながらエアコンや照明、セキュリティカメラなど、家庭内の電化製品を遠隔操作・制御するといった製品が近年続々と登場するなど、IoT技術は、これからどんどん実用化が進むと予想されている。今回のように、生活者だけでなく、企業の課題解決に直結する技術・アイディアが登場することによって、IoTの浸透はますます加速していくだろう。

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