※本記事は、エンジニアのためのWebマガジン「CodeIQ MAGAZINE」の記事をReadWrite Japanにご提供頂いたものです。

無料から使えるクラウド会計ソフト「freee」が登録事業所数が10万を突破し、いちやく知られるようになったスタートアップ企業freee株式会社。

働く価値を自らに問い、働きやすさを自らハックする4人のfreeeエンジニアを紹介していく。今回登場するのはfreee創業から参加し、開発をリードする橫路隆氏だ。
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

有志数人のハッカソンで企業化を決意

前職はソニーで組込み系のソフトウェア・エンジニアをしていました。一眼レフからテレビ局で使うような業務用まで、カメラのミドルウェア開発です。きわめてよく組織化された大企業のシステムには学ぶことが多かった。

ただ、あまりにもシステム化されているがゆえに、たとえ自分がいなくなっても困らないんじゃないかと思うことがありました。自分が将来にわたって、社会へ貢献する価値を最大化したい。自分がこの手で作ったプロダクトを社会に提供し、その価値を実感したい、そういう想いがありました。

実家が小さな自営業で在庫管理や販売管理で苦労しているのを見ていて、学生の頃VBAでExcelの自動化プログラムを書いてあげたことがあります。うちの実家に限らず、日本の企業の8割以上は従業員20人未満の中小零細企業。その人たちのために何か役立つ仕事はないかとは、ずっと考えていたことです。

freee株式会社代表取締役の佐々木大輔とは、共通の友人を介して知り合いました。スタートアップのアイデアを持っていて、エンジニアを探しているという。会うなり意気投合して、一度、有志数人でハッカソンをやろうということになった。2012年5月のこと。まる2日で開発したのがクラウド型の会計ソフト、今の「クラウド会計ソフト freee」の原型です。

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「これ、いけるんじゃないか」

後はあっという間の展開でしたね。私が7月に会社を辞めて、freeeの創業に参加。最初は私と佐々木の2人しかいないから、2人でRuby on Railsで書きまくった。β版を作っては周囲の人に使ってもらい、意見をもらった。

「TechCrunch Tokyo 2012」のスタートアップバトルでファイナリストに残ったことが、資金調達のメドが立つきっかけでした。翌2013年3月に最初のバージョンをリリース。2014年7月、サービス開始から1年4カ月で登録事業所数が10万を超えました。  

5年で100万ユーザー獲得を目指す

簿記がわかる人であれば、従来の会計ソフトが使える。さらに規模が大きくなれば、会計士に頼んで処理ができる。しかし、それができない個人自営業者や零細企業もたくさんあります。

一方で、今のビジネスのお金の流れの多くがWeb化されていて、銀行やクレジットカードの入出金もWebでわかるし、小さな店がECサイトに出店するのもWebを使っています。最近はPOSレジをiPadのようなタブレット端末に置き換えたり、Squareなどのモバイル・ペイメント・サービスでクレジットカード決済を行う店舗も増えてきました。

こうしたデータを取り込めば、相当な割合で小企業の会計処理は自動化できるはず。日本にはスモールビジネスに従事している人が数千万人もいます。まだまだ開拓の余地がある。私たちは5年間で100万ユーザー獲得を目指しています。

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最初はアプリケーションエンジニアしかいなかったのですが、最近はインフラやUXデザイン、データマイニングなどの専門的な分野も強化し、さらに品質保証体制も整備するようになりました。クラウド型のサービスは開発と更新のスピードが命。

とはいえ、お客様の日々の会計処理を担うわけですから、決して落ちてはならない、セキュリティを破られてはいけない、ということが大前提で、そのためにはインフラがしっかりしていないといけません。

Webリテラシーはある程度あるけれど、会計ソフトはよく知らないというお客様が現時点でのターゲットなので、UI/UX部分の品質管理も重要なテーマになっています。ユーザーはどんな操作のときにつまずくのか、しっかりログを分析して、それを日々の改善に役立てています。

技術優先ではなく、あくまでもプロダクト志向

現在はエンジニアが20名。大きくアプリ開発と基盤チーム、グロースチームに分かれていて、私はリード・エンジニアとして開発全般の指揮をとると同時に、基盤サービスの拡充に注力していています。

うちの組織はフラットが特徴。プロダクトマネージャーという立場の人が一人いるけれど、上下関係はなくて、エンジニアがファンクションごとにそれぞれ役割をもち、ときにはそれらがクロスするようにして開発を進めています。

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会社には5つの価値基準があります。 「ユーザーにとって本質的に価値があると自信をもって言えることをする」「Hack everything ─ なんでもハックする。みんなが楽しく生産性をあげられるように。」というようなもの。

基準はまず役員たちがそれぞれの前職での経験を活かして決めましたが、先日、社員全員で合宿をやって、細部を検討し直しました。価値基準のポスターはトイレの壁にも貼ってあります。

会議の中でも、「それって、うちの価値基準に反してない?」というような会話が普通にされます。一人ひとりが自分のミッションの中に、会社としての価値基準を反映させているのだと思います。

創業から2年。プロダクト志向でモノを考えられるいいチームができつつあると思います。「こんなすごい技術があるぜ」と見せびらかすのではなく、あくまでもユーザーにとって価値のあるプロダクトを作る、そこに自分たちの技術を込める、そういうモチベーションで私たちは動いています。

メンバーの間で意見が食い違うこともあるし、これから会社の方向性もどんどん変わっていくでしょう。けれども、プロダクトをよくするためにはどうすればいいか、自分には何ができるか、という視点がしっかりしていれば、意見の違いもすぐに建設的な方向でまとまっていくはずです。

ハック・エブリシング。趣味と仕事を混同させる

技術者はもっと欲しいけれど、特に専門分野を限定しているわけではありません。あえて言えば、Webの仕組みやコンピュータの仕組みなど基本的なことを知っていて、その上で自分のスペシャリティを持っている人。

コードを見ればその人のスキルはある程度わかりますが、うちはあくまでもそのスキルをどうやって製品に反映していくかということが重要。いわば課題解決型のエンジニアが必要なんです。

先ほど「ハック・エブリシング」が価値基準の一つと言いましたが、例えば受付のところに置いてあるiPad。「受付をスムースに進めるためのアプリがあるといいね」と言い出したエンジニアが、この前出たばかりのAppleのSwiftでさくっと書いてしまいました。

決して言われたからやったわけじゃなくて、不便だと思うことは自分たちが率先して解決し、そのこと自体を楽しんでしまう。「仕事と趣味を混同しても全然OK」というのが私たちのポリシーなんです。

卓球とかカラオケとかミニ四駆とか、趣味を活かした社内部活動も活発だし、カフェにあるようなソファに寝っ転がってプログラミングする人もいる。自分が最もパフォーマンスのでる働き方をそれぞれが追求している。

飲み物をタダにしたり、晩ご飯のお弁当を会社が支給したり、オフィスの近隣に住む人に住宅手当を出したり、会社としてはそういうワークスタイルをこれからも積極的に応援しようとしています。

これから社員が増えると、いかにスピードを落とさずに、コミュニケーションのレベルを維持するかが重要な課題になるでしょう。営業などビジネスサイドの人たちとエンジニアの視点や方向性を共有することや、いかにチームやチームメンバーの成長・学習をプロダクトの成長に繋げていいけるかが、企業としての課題になると思います。そういう課題を一つ一つクリアしながら、freeeはこれからも成長を続けていきます。

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<プロフィール>
橫路 隆氏
freee 株式会社 リード・エンジニア 共同創業者/取締役
1984年生まれ。Ruby City 松江育ち。慶應大学大学院理工学研究科修了。ソニーでデジタルカメラ領域の共通ソフトウェア開発に従事。2012年、freee創業に参加。

記事出典:CodeIQ MAGAZINE

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