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ニューヨーク大Centre for Urban Science and Progress (CUSP)から、スマートシティのテスト調査から得た発見についての発表があった。

ニューヨーク近隣のコミュニティに関する定量化された調査において、ここまで深くまで踏み込んだ内容のものはこれまでなかっただろう。彼らは、ブルックリン区Red Hook周辺において、高い「空間分解能」と「時間分解能」を備えたセンサーで住民たちの生活の質に関連したデータを収集し分析した。

Red Hookは、経済的に恵まれていない地域である。地下鉄も通っておらず、インターネットのホットスポットも数えるほどで、人口の70%が市が用意した公共住宅に暮らしている。住民の喘息の割合は国民平均の2.5倍にもなり、1/3以上が連邦が定める最低生活水準以下の暮らしを送っている。寿命予測も平均より10年ほど短い。Red Hillは、2012年にハリケーン・サンディによる洪水の影響を強く受けた。

今回のような数字に基づいたコミュニティの測定は、長期的な近接地域の情報調査の取り組みだ。研究者はニューヨークの3つの隣接地域(ハドソン・ヤード、マンハッタン南部、レッドフック)を調査する。狙いは、「地域の環境面や物理的なデータの収集分析」とそれぞれの地域住民の生活を調査し、理解を深め、「個人および社会の健全な生活に役立つ環境づくりをおこなう」ことだ。

“環境”と“社会の健全さ”の関係

研究者たちが探求しているのは、コミュニティの物理面、環境面、社会面の相関関係だ。測定の基礎となるのは、大気の質や気温、気圧、湿度、光量などの環境面の要素である。

大気についてのデータ、とりわけ(明らかに心肺機能に直接的な影響がある)PM2.5の路上の濃度の情報が収集され、それらをビルのエネルギー消費と突き合わせることで、人のふるまいや環境の状況が“どう住民の健康に影響するか”について調べることができる。

また、彼らは都市のヒートアイランド現象(UHI)の影響についても調査している。これは人口の路面(コンクリートやアスファルトなど)によって暑さが増すことを指す。UHIは、呼吸系のコンディションやエネルギーの浪費、大気汚染に関わってくるものだ。局所的な気温の数値化により、温度と環境要素や住民の健康との相関を明らかにすることができる。その結果は、地方自治体が熱波やそのほか高温に起因する非常事態に脆弱な建物やコミュニティを特定するのに役立てられる。

 

 

市民科学による包括的な測定基準

QC Urban QoLセンサーは、このプロジェクトのために作られた測定用のプラットフォームである。低コストながらも、Adafruit Industriesの5V Trinket Proを用いた信頼性の高いセンサーアレイを備えている。空気の質や騒音、光量、通行人のカウント、温度、気圧、湿度などを計ることができる。

こうして集められたデータを管理し、モビリティ、ソーシャルメディア、およびWi-Fi使用データと組み合わせることで、時間の経過とともに変化をベンチマークし、都市の他のエリアと比較するための近隣プロファイルを作成できる。こうした測定は、コミュニティの問題を特定し解決することに活用され、新たな感知モダリティ、データの分析、視覚化を通じて「環境の健全さ」と「流動性」にフォーカスするのに役立つ。地域社会サービス団体 Red Hook Initiative(RHI)は、センサーを設置し、地元のコミュニティと連携して、追加のボランティアデータを提供するよう求めた。

Red Hookには、4つの異なる高度にセンサーが導入される。また、地元住民には、温度、騒音、空気の質を5秒間隔で測定するために、ポータブルセンサーも短時間提供されていた。この取り組みは、地域をもっともよく知る人々に、データ科学を通して問題を特定する機会を提供したと言えるだろう。

IoT技術は次世代都市インフラストラクチャと見なされているが、低所得で経済的に苦労している地域社会は都市や市民の技術展開の焦点ではないことが多く、多くのスマートシティ戦略において資本の問題が持ち上がっている。

絶好のコラボレーションの機会

CUSPの取り組みは、住民に無料で提供することを目的としたRed Hook Wifi参加者が作成したHack Red Hook緊急洪水時に車両避難を管理するシステムであるHighGround.nycなどの他プロジェクトとも関係がある。また、技術情報やデータへのアクセスが制限されている組織による、排水/雨水管理の改善を支援することを目的としたプロジェクトであるOpen Sewer Atlas NYCといったものもある。

地元のコミュニティや公共政策に影響を与えるようなセンサデータを引き出すことが可能かどうかについて言うと、CUSPの調査結果は十分ではない。

大気汚染の最大の要因は、地元のコミュニティによるBBQに起因していたという。しかし、研究者は地元住民を巻き込んだコミュニティプロジェクトを成功させてきた。それらのデータは、3つの近隣のうち最初のものからのものであり、比較され、対照される。これは、異なる地域と土地利用の影響を比較する絶好の機会であり、結果として市民を地域社会内のスマートな科学に巻き込むことができるだろう。

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