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※本記事は、2013/12/9に投稿されたTechAcademyマガジンからの転載記事である。


本記事は、シンポジウム「なぜプログラミングが必要なのか?」のセッション【教育とコンピュータ】を紹介するイベントレポートだ。子ども向けのプログラミングを含めた教育を今後どのように進めていくべきなのかについて、登壇者がそれぞれの立場から語った。


先日、12月2日にシンポジウム「なぜプログラミングが必要なのか?」が開催されました。

TechAcademyも協力企業として参加しています。そこで、2回に分けてイベントレポートをお届けします。今回は、「教育とコンピュータ」のセッションをお届けします。最近なにかと話題に上っている子どものプログラミングや情報教育について語られたセッションとなりました。

 

セッションの登壇者

本セッションでは教育に関わる方々が登壇されて行われました。

モデレーターは松村太郎氏がつとめています。

  • 筧 捷彦氏(早稲田大学 理工学術院 基幹理工学部/研究科 情報理工学専攻 教授)
  • 石戸 奈々子氏(NPO法人CANVAS理事長)
  • 鈴木 久氏(株式会社ベネッセコーポレーション デジタル戦略推進部UX開発セクション)
  • 瀧田 佐登子氏(一般社団法人Mozilla Japan代表理事)
  • 松村 太郎氏(ジャーナリスト)

石戸氏のNPO法人CANVASでは、プログラミングのワークショップを開催しており、最近ではGoogleとの連携も始まっています。また、瀧田氏のMozilla Japanでは、リアルなバスを走らせてさまざまな実験を行うプロジェクト「Mozilla Bus」などの活動をしています。セッションではそれぞれの立場にそった内容で答えていました。

関連記事:被災地で「防災」テーマにゲーム作り! プログラミングで「こどもの創造性」育てるデジタル時代の教育論

 

セッションの内容

ここからはセッションの内容をお届けします。

モデレーターから登壇者に質問する形で進められました。

 

- プログラミングの前に情報教育の環境はどうなっているのでしょうか?

筧:学習指導要領では、高校の情報の授業で学ぶことになっていますが、現実は多くの高校では大学の試験科目に入っていないので二の次になりがちです。

また、中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」が入っていますが、たまたま能力の高い先生にあたれば正しく学べますが、現実はそうなっていないようです。

その状態で大学に入った生徒を見ると、能力に大きな差があります。できる人は非常によくできますが、使いこなせていない学生もたくさんいます。

- NPO法人CANVASでは、いかに子供たちに多くの体験をしてもらうかを大切にしていると思いますが、どのようにアプローチしているのでしょうか?

石戸:ワークショップコレクションというイベントを開いたり、子ども向けのプログラムをパッケージ化して全国の学童、保育園、児童館に提供したりしています。各地域で自律分散的に活動ができるように、地域でのコミュニティづくりに取り組んできました。

そんな活動をするなかで、学びの場に変化が現れているのではないかと感じています。

以前、「150年前の外科医を現代の手術室に連れてきてもまったく役に立たないだろう。それくらい医療は進歩を遂げた。しかし、150年前の教員を現代の教壇に立たせても、ほぼ同じように授業ができるのではないだろうか。そのくらい、学びの場は変わってこなかった」と、MITの教授が言っていました。

日本でも江戸時代に寺小屋というシステムがあり、明治時代になり西洋の教育システムとして一斉教育というものがスタートされて、それから約150年経ちましたが、たしかにほとんど変わってきませんでした。そうこうしている間に、家庭はテレビもデジタルになり、高校生も9割近くが携帯電話を持つようになり、仕事はパソコン無しでは成立しなくなりました。

ただ、学びの場だけが情報化から取り残されていますよね。

かつて学校というものは、1番初めにテレビが入る場所だったりピアノが入る場所だったりと最先端の場所だったのに、いつのまにかそうではなくなってしまっています。

それは非常に問題なのですが、最近になって“テクノロジーが学びを変えようとしてくれている”のもまた事実かなと思います。

2010年の政権交代にともない、「1人1台情報端末としてデジタル教科書を持って子供たちが学習する環境を整えましょう」というのが政府目標として出されました。これは単にデバイスを配りましょう、ということではなくて、「暗記記憶型から思考想像表現型の学びへ」とか「先生の一方的な授業伝達ではなく教え学び合おう」という学びの変化だと思うのです。

なので、意志を持って学びの場を変えるという努力を大人がみんなでし始めなきゃいけない時期にきているのではないかと思います。

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石戸氏が理事長をつとめるNPO法人CANVASのプログラミングワークショップ

- (コンピュータ教育では)どんどん子どもの方が先へ進んで学んでいくという環境ができているのでしょうか?

瀧田:そうですね、私の息子はいま中学2年生で、技術の授業でエクセルをやっています。

子どもたちはデジタルネイティブと呼ばれる世代なので、どんどん先に行っているわけなんですね。コンピュータも簡単に、先生以上に使いこなしてしまいます。そんなことになっていても、やはり先生はやらなくてはいけないことが指導要領で決まっていて、その枠から外れないというスタイルが日本の教育スタイルとしてあります。

じゃあ、この教育スタイルにプログラミングを入れたときにどうなるかを考えると、なかなか難しいと思います。

現場も、国立・私立・公立と環境や先生方の格差もあるだろうし、時間的な余裕という部分もかなり違います。現場がわからなくて、カリキュラムだけができて、そんな状態でさぁやりましょう、と言ってもうまくいきません。

将来的にどう子どもを育てたいのか、何につながっていくのか、子どもたちがこれを学んでどうなるのか、というような先が見えない以上、 子どもたちもときめかないでしょう。教えている先生が楽しいと思って教えてくれるのと、「とにかく何でもいいから覚えろ」という形で教えられるのではずいぶん違うと思います。

- 教育では、「どう評価する仕組みを作っていくのか」が課題になっていくかと思うのですが、いかがですか?

鈴木:まだ学校では(コンピュータは)教科という形にはなっていません。これが教科になってしまうと、受験の科目になってテストで選抜するための学習になってしまいます。

そうなると、実際に使っていく、社会で自立して生きていくために必要な感覚や知識といった認識とはかけ離れてしまうのかなと思います。

学習というカリキュラムの中で、「これをいつまでに習得しなさい」というものではなくて、自分から学んでいくように「習得から探求」への移行が必要なのではないでしょうか。

たとえば、スマホのコンテンツやアプリケーションを使う側ではなく、自分が作って他人に見せてみる。見た人が感動し、その感動がさらに自分の感動へとつながっていき、さらにこんなことがやってみたいということを必然的に学ばないといけません。

ただ、機会や場が無いとなかなか1人でそういった体験をするのは難しいです。

一緒に経験していく場があると、実践的に自ら学んでいくことができるので、そういう場をもっと作りたいなと思います。

- 子どもたちはプログラミングなど、コンピュータに触れるとどういう反応をするのでしょうか?

石戸:インターネットにはじめて子どもたちが触れたとき、能動的なメディアといっても受動的に使っていることが多いと思います。

ただ、それは可能性を知らないだけで、実はこんなものが作れるんだとか、自分のアイディアを世界中の人たちに知ってもらうことができるとか、他人と何かを一緒に作ることができるんだ、ということを一度知ると子どもたちの世界は一気に広がるんです。

特に、共同で何かをするというのはネットの優れたところだと思うのですが、1人で何かをやらなきゃいけないとなると、「自分の力で何ができるか」という発想になりますが、コラボレーションを前提にすると、「何がしたいか」ということを前提に考えて、「それを実現させるためにはどんなメンバーが必要で、どういう知識を集めていけばいいか」というふうに発想を変えていくことができるのかなと思います。

なので、まずはそういう世界を子どもたちに体験してもらえたらいいな、と思いながらいつも取り組んでいます。

- ありがとうございました。

 

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