ビッグデータ解析と聞くと、企業や事業部の依頼を受け、先進的な技術を追求するエンジニアを想像する人が多いかもしれない。

しかし、サービスやカスタマードリブンで、その課題解決に自身の技術力やマネジメント力を活かしたいと考えるエンジニアもいる。そうした想いを実現する場として リクルートテクノロジーズ を転職先に選んだのが、ITソリューション統括部 ビッグデータ部 脇山宗也(わきやま・もとや)氏だ。同じチームメンバーの高橋Viviane(たかはし・ビビアネ)氏、高橋諒(たかはし・りょう)氏も交えて、その醍醐味を伺った。

 

“ゼクシィならでは”の課題をビッグデータで解決

– 現在、担当されているサービスはどのようなものでしょうか?

脇山宗也氏(以下脇山):今はゼクシィのアプリを担当しています。はじめはゼクシィのビジネス上の課題を特定するために、ゼクシィアプリの分析を行なっていました。しかしゼクシィアプリリニューアルにあたってパーソナライズを担当することになりました。

ただ“パーソナライズ”といっても、ゼクシィの場合は他のサービスとは少し異なる部分がありまして。

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◇リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部 脇山宗也(わきやま・もとや)氏

一般的なカスタマーセグメントは、年齢や性別などで区切ることが多いです。しかしゼクシィのカスタマーはそうした一般的なくくりでは判断できず、プロポーズされた直後であるか、とか、すでに結婚式場のイメージを具体的に持っているのか、といった「カスタマーが結婚式を実施するまでのどのフェーズにいるのか」によって大きな違いが出てきます。

また、結婚式のタイプやカスタマーの好みはもちろん、「結婚に関する知識がどの程度あるのか」という違いも影響してきます。そうした特性や、そこから発生する様々なビジネス上の課題をいかに読み取って機能に反映するのか、という部分がリクルートテクノロジーズのデータサイエンティストの腕の見せどころだと感じています。

ゼクシィで実施されたアプリのリニューアルでは、結婚式場検討の事前段階から結婚式後までカスタマーに利用していただくことを想定した、リクルート初の伴走型アプリを目指していました。これはビッグデータ文脈でよく使われる、従来型のパーソナライズアルゴリズムでは実現が難しく、新たなロジックを検討する必要がありました。6

そのために、以下2点の取り組みを実施しました。

まず1つ目は、式場の好みや指輪の好みなど、カテゴリ横断でパーソナライズができる、機械学習の手法を一般化した新アルゴリズムを考案したこと。2つ目は、従来のパースナライズで実施されている「嗜好性」に加えて、カスタマーの「既読状態」「フェーズ」、記事の「新着性」の4つを融合させたパーソナライズを実装したことです。

レコメンドとプッシュ通知の組み合わせに関しても担当しました。ゼクシィの場合、パーソナライズやレコメンド機能をよりリッチにしていくべく、カスタマーの行動を分析してその結果を都度機能面に反映させ、サービスをブラッシュアップしています。単にデータ解析の技術や型を当てはめるのではなく「そのビジネスならでは、ゼクシィならでは」の課題解決に向けて、日々チューニングを心がけています。

– ゼクシィアプリの開発は他サービスと比べると特殊な部分があるとのことですが、今回のリニューアルにあたって難しいところはありましたか?

脇山:リニューアルに合わせ、新規でパーソナライズを導入しました。なので具体的にパーソナライズ対象になる記事が存在しないというゼロの状態から、ロジックを考えるのは難しかったですね。

ただ、そのリニューアルチームの中にゼクシィ事業側の記事作成担当もいたので、彼ら彼女らと協力して、対象となる記事をあらかじめ作ることが可能でした。パーソナライズ前提で記事に必要な要素を提案したり、どのような記事を作成する予定なのかをヒアリングしたり、常に事業と協働して作っていけたのがとにかく面白い経験だったと思います。

 

カスタマーニーズの“一歩先”をサービスに実装

– データ分析の専門家がサービスに深く関わった、という面白い事例ですね。そもそもリクルートテクノロジーズに転職されたキッカケはどういったものでしょうか?

脇山:以前はビッグデータ関連の受託・研究開発企業にいたのですが、企業からの依頼を受けて研究をしても、それが実際に形となりリリースされるかどうかはわからない状態でした。もしリリースされたとしても、継続して改善のためのお手伝いができるかどうかはクライアント次第。ただ受託して手を動かすだけではなく、もう少しビジネスに近い部分で技術を使い、目に見える形で「課題解決に携わっている」と実感したかった。

リクルートテクノロジーズのビッグデータ部は、リクルートグループ各社の事業部と一心同体でビジネス上の課題を解決していきます。“まずビッグデータ解析ありき”ではなく、“ビジネスをよりよくするために、ビッグデータ解析がある”んです。私はゼクシィを担当してきましたが、リクルートグループのあらゆるサービス事業部と協働するチャンスがあります。

技術は常に進化し続けますので、今あるものの“一歩先”をサービスに実装したい、そしてカスタマーにも喜んでほしい。そう思って転職した先がリクルートテクノロジーズです。

– 現在所属されているビッグデータ部は、どのような部署ですか?

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◇左から 高橋諒(たかはし・りょう)氏、脇山氏、高橋Viviane(たかはし・ビビアネ)氏

脇山:リクルートテクノロジーズのビッグデータ部は「BigData技術をリクルートグループのサービスに接続し、ソリューションを開発する」というミッションを持っています。そのため、事業側から要望に応えられる技術を提案するだけでなく、こちらでサービスの課題を見つけて改善への提案をすることが求められます。

所属している人もプロフェッショナルで技術に長けている人が多いのはもちろんなのですが、ビジネス感覚に長けている人も多く、技術とビジネスをつなぐような役割を担っています。だからこそサービスに対する思い入れも大切ですが、事業部メンバーときちんと会話ができるコミュニケーション能力も大事になってくる部署です。相手の話していることをきちんと聞いて、相手が「本当に求めているもの」は何か、背景も含め理解したうえでアドバイスや提案ができるといいですよね。

– 転職前に想像していたような立ち位置で動けていますか?

脇山:そうですね。前職とは異なり、事業部メンバーからサービスの課題などを聞いて、継続的に改善のためのディスカッションを行っています。そういったコミュニケーションをとりながら解決のための提案を行う、というのは受託の立場では難しいことですが、リクルートテクノロジーズではできます。実際に話しやすい雰囲気もありますし、やりやすいと感じています。

特に、ビジネスやカスタマーに近いところで自分の技術を活かせているので、その結果の良し悪しをダイレクトに見ることができて面白いですね。すでに存在するデータを分析しているところは多いですが、それに対して施策を打ったときに、「どのくらいビジネスが変わるのか」まで追いかけられる環境はなかなかありません。すぐにリアクションがあって、しかもそれを見ることができるというのは、非常に開発のしがいがあって面白いと思います。

 

リクルートグループだからこそできる、ビッグデータ分析の面白さと難しさ

– 「ビッグデータでサービスをより良くする」ということを実践されていると思うのですが、その魅力とはどのようなものでしょうか?

脇山:リクルートテクノロジーズ内では、大きく2つのポイントがあると思います。1つ目は、人の行動を仮定してから分析するという手法が多いなか、〈実際の行動をもとに分析できる〉点です。ペルソナではない実在する人物の行動を分析することで、ボトルネックの在処や解決すべき課題を明らかにする。こういったデータドリブンな意思決定をおこない、施策が打てるのは面白いところだと思います。

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もう1つは、リクルートグループ各社にあるまだ分析されていない〈データ量の豊富さ〉です。リクルートグループ各社のサービス、そこから発生しているデータの中には多種多様なテキスト情報やアイテム情報がたくさんあります。しかしその分析は、まだそこまで進んでいません。そもそもデータを十分に持っている状態で分析できるという場はあまりないのですが、リクルートテクノロジーズにはデータも環境も十分すぎるくらいにあります。レコメンドやパーソナライズ、検索といった新しいサービスや使い方を確かな根拠とともに、ビッグデータ技術をもって提供できるわけです。

ただ、実際にカスタマーの動きが見える状況をありがたく思う一方で、あまりにも多様で難しいと感じることもあります。さまざまなカスタマーをある要素で分類してまとめてみたり、その特徴を詳しく見てみたりするには、既存の技術だけではうまくいかないこともあります。やってみると難しいなと感じるところですが、これも現場に近いからこその面白みかもしれませんね。

– 難しいけれどだからこそ面白い、というような感覚ですよね。今後、チャレンジしたいことはありますか?

脇山:リクルートグループのサービスに、ビッグデータ解析をもって、これまでにない新しい価値を提供したいですね。レコメンドの精度などは、理論上数値では上限が見えているものです。なので数値を追求するだけでなく、事業メンバーと相談して応用展開していきたいです。

そのためにも、自分でサービスを使ってみて使いづらさや必要な機能を探したり、記事を作成している人にヒアリングしたりするなどの地道な作業が重要になってきます。こういった地道な作業も含めて、ビッグデータや統計的な技術をもって今ある課題に真摯に対応し解決することで、より多くの人に使ってもらえるサービスになると思っています。

– 脇山さん、ありがとうございました。脇山さんチームのメンバーである高橋Vivianeさんと、高橋諒さんのお二方についても、どんなお仕事をされているのかお聞かせください。

脇山:まず二人には、ゼクシィの中の1つの機能を分担して開発するのではなく、それぞれが1つの機能を担当し開発するというやり方をとってもらっています。「責任を持って自分のプロダクトを作る経験を持ってほしい」という意図があります。

4高橋Viviane:私はまず自然言語処理技術を活かして、レコメンド機能や記事の関連リンクなどを担当しています。たとえば以前は、カスタマーが読んだ記事と関連リンク先が最適でない場合もありました。そのときは自然言語処理を活かし、新たな検索機能を使用することで、改善ができました。

私も「カスタマー企業でエンジニアリング力を活かしたい」という希望を叶える場として、リクルートテクノロジーズに転職しました。ゼクシィは、カーセンサーに続き、2つめの担当案件です。リクルートテクノロジーズではグループ各社に対してビッグデータ技術を提供していますので、1つのサービスだけでなく、いろいろなサービスに関われるのも魅力です。

高橋諒:私は新卒で入社しました。ゼクシィでは、ジュエリー関係のレコメンドロジックの実装や、感性検索機能の開発と推進を担当しています。

5この感性検索機能を使用することで、今までは、1つのキーワードでしか検索できなかったものが、「和装×かわいい」など、2つ以上のワードを掛け合わせた検索が可能になり、検索レベルの向上に寄与しています。

もともと心理統計をやっていたのですが、自分の研究がどういう場で使われ、どういう価値を生み出せるのか、机上で研究しているだけでは分かりません。そのため、リクルートグループ自社のサービスに対して研究に基づいた提案ができるリクルートテクノロジーズへの入社を決めました。

 

チームや事業メンバー協働で、より「カスタマーファースト」なサービスを

– チームメンバーのお二人にとってのやりがいや居心地、今後の目標などはいかがでしょうか?

高橋Viviane:前職と比べて話しやすい人が多く、マネージャーなどにも相談しやすいです。かなり働きやすいと感じています。もともと自然言語処理がやりたかったので、それが活かせているのもいいですね。今後は機械学習を使ったレコメンドなどにもチャレンジしたいですし、膨大な口コミを分析し、わかりやすくまとめて見せるなど、カスタマーにより便利な機能を提供できたらいいなと思っています。

高橋諒:チームメンバーとして脇山さんを見ていると、とにかく頭の回転が速く、何か施策を打つ際のメリットとデメリットを瞬時に出して事業側にわかりやすく説明されています。私はメリットばかりに注目してしまうので、脇山さんの振る舞いから学びたいと常々思っています。

今後は事業メンバーとも相談しつつ、カスタマー1人1人の好みに合わせた出し分けなどを実現して、よりカスタマーファーストなサービスの実現に貢献したいですね。

– ありがとうございました。

提供:リクルートテクノロジーズ


今回取材した方

リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部
脇山宗也(わきやま・もとや)氏

2013年中途入社。前職ではシステム開発会社でコンサルティング業務に従事。
リクルートテクノロジーズ入社後はゼクシィ、フロム・エーなどを対象にユーザ行動の分析やパーソナライズ機能の構築業務を担当し、データドリブンな意思決定の推進と、サービスの来訪者・応募者増に貢献。

リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部
Viviane Takahashi(びびあね・たかはし)氏

2015年中途入社。ブラジル・リオデジャネイロ生まれで、日本の大学院を卒業。
電機メーカ-のR&D部門を経てリクルートテクノロジーズに参画し、リクルートグループの複数サービスにおける検索とWebパーソナライゼーションシステムの開発を担当。

リクルートテクノロジーズ ITソリューション統括部 ビッグデータ部
髙橋諒(たかはし・りょう)氏

2015年入社。主にリクルートが抱えるサービスの行動ログ分析とエンハンス開発を担当。
その一方でR&Dとして、文書解析を用いた社内向けAPIサービスの開発推進を積極的に行っている。

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