異国の地で開発を推進してきたリクルートテクノロジーズのエンジニアに話を聞き、大規模開発を成功に導く真髄に迫る本連載。第二回は、リクルートテクノロジーズ ITマネジメント統括部 ITマネジメント1部 オフショア開発1グループ※の海老原立弥氏に、オフショアのエピソードを中心に、プロジェクトを成功に導く秘訣を伺った。
※組織名は2016年3月時点

システム開発に抱いた閉塞感

編集部:まずはこれまでの経歴についてお教えいただけますか?

海老原:もともと物理が好きで、高校時代に「モンキーハンティング」などの問題をプログラミングで解いた経験から、プログラミングの楽しさに目覚めました。そのまま物理専攻で大学院まで進学しましたが、いざ周囲を見ると学者として自分の基盤を築くことに難しさを感じたんです。そこで社会人として、自分が好きでスキルも活かせる職業を考えた時に、エンジニアが浮かびました。

その後、1社目でインフラ・アプリエンジニアを約4年、2社目でITコンサルタントを約3年経験しました。最初のインフラ・アプリエンジニア時代では要件定義、設計、開発、運用を一通り経験しました。その後、自分のスキルの幅を広げようと、2社目のITコンサルタント時代はより上流工程で、プロジェクト全体を俯瞰して各段階のスキーム自体を作りこむ経験を積みました。この経験を活かしてシステム開発方法論などのセミナー講師なども行うようになったのですが、今度はなんだかどんどん開発の現場から離れて行ってしまうことにモヤモヤするようになって。

当時、自分がシステム開発をやりきったとも思っていなかったですし、プログラミングが好き、手を動かすことが好きだから、評論ではなく現場にいたい。そんな思いを抱えながら、次のステージとして挑戦できるものはないかと考えるようになりました。

リクルートテクノロジーズ ITマネジメント統括部 ITマネジメント1部 オフショア開発1グループの海老原立弥氏
リクルートテクノロジーズ ITマネジメント統括部 ITマネジメント1部 オフショア開発1グループの海老原立弥氏

編集部:次のステージへ移行するきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

海老原:実は、自分のキャリアについて考え出したのとちょうど同じ時期に、従来のシステム開発の限界や閉塞感のようなものを感じていたんです。
その理由の一つに、エンジニアの人材不足があげられます。たとえば、ITコンサルタントとしてシステム開発のベンダーを募集した際に、どこからも手が上がらない、ということがありました。「単純に人材が足りない」「人数は足りるけれどプロジェクトを引っ張れるプロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダーがいないので受けられない」という声が多かったんです。

この問題は、プロジェクトの質にも大きく影響します。人材不足を補うためにそのプロジェクトに求められるスキルや経験に合致していないエンジニアもOJTという名目で現場に投入するしかなくなり、その結果コミュニケーションコストが増えるなどの理由で、プロジェクト全体の質が下がってしまう可能性があるからです。
かといってすぐ優秀なエンジニアが生まれるわけではない。そして日本は少子化、労働人口はどんどん減るので母数も増えない、でもIT化はどんどん進んでいく・・・・

そんな風に悶々としていた時に、リクルートテクノロジーズで独自のオフショア開発が行われているという噂を耳にしたんです。この「オフショア開発」というキーワードに惹かれたのが最初です。
昔は、オフショアといえば第一にコスト削減の手段というイメージが強かったと思いますが、「コスト削減だけでなく、 オフショア開発にはもっと可能性があるのでは?」という考えが頭をよぎったんです。
そんな経緯もあって、リクルートテクノロジーズの中途採用を受け、実際の現場の話などを聞いて、「ここならオフショア開発の可能性を見いだせるのではないか、自分がそれをやってみたい」と思い、入社を決めました。

エネルギッシュで洗練された現地パートナーとの出会い

編集部:ITコンサルタントとして感じた日本のIT業界の課題を解決する方法と、ご自身の「現場にいたい」というキャリア観が「オフショア開発」という言葉でつながったんですね。それでは入社後の業務と、現地の第一印象についてお聞かせください。

海老原:2014年の入社当時、ちょうど大型サービスのオフショア開発プロジェクトが進行していました。私はすぐにベトナムのダナンへ向かい、現地のリソースや進捗、リスクなどの管理を担当することになったんです。
実際に現地へ行って感じたのは、とにかく街自体がエネルギッシュで、人々も活気に満ちあふれているということ。私も生活の中で街や人々から元気を分けてもらい、新しいことへチャレンジする気持ちが湧き、精力的に仕事をこなせた気がします。

編集部:実際の業務に携わってみて、印象的だったことはありますか?

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海老原:あえて挙げるとすれば“オフショアだから”という苦労をあまり感じなかったことです。オフショアと聞くと、一般的には「言語・文化・場所」が壁となるイメージを抱くと思います。でも私が参加したプロジェクトでは、洗練された現地パートナーのおかげでスムーズに仕事ができました。

というのも、通訳の方が言葉の壁だけでなく、文化的な違いを上手く吸収しながら伝えてくれたためです。日本の商慣習なら当たり前のこととして成り立つ“行間を読む”というか、日本側の曖昧な指示や指摘も、時にはこちらに質問を返しながら言葉を補完して正確に伝えてくれました。これにより、オフショアでありがちな「指示と違うことをやって失敗」「何度言っても通じない」といったことがかなり軽減されています。もちろん、指示が上手く伝わらないことも時にはあるんですが、これは私自身がしっかりと理解できていない場合に多いですね。オフショア開発だから、ではなく単純に自分の問題です。指示を出す側のビジョンが明確なら確実に伝わるので、そのあたりは日本でのビジネスとまったく同じだと思います。

現場で実感した新たなオフショアの可能性

編集部:エンジニアとして仕事の面白味はどのような部分で感じられますか?

海老原:私自身がベトナムに行き、現地ベトナム人リーダーと一緒に開発チームをまとめていくのですが、その中での自分の役割を何とするかなど、与えられた裁量が大きいところです。
一般的な企業では、エンジニアとマネジメント層の役割が明確に分かれていることが大半です。しかし今は、必要に応じて役割を「染み出させる」ことができます。たとえば、マネジメント業務担当の私が自分もコーディングしたい、その方が早いと提案すれば認めてもらえますし、実際にチームメンバーとのペアプログラミングなども行っています。かなり自由に開発に携わっていますね。エンジニアとしての満足度や好奇心を満たせ、なおかつ活躍の場も増える、これはうちの会社ならではの楽しさじゃないでしょうか。

編集部:リクルートテクノロジーズへ入社してから、今までと変わったことがあればお聞かせください。

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海老原:オフショア開発に対するイメージが明確に変わりましたね。ベトナムにオフショア開発を「委託して、管理する」のではなく、ベトナムで作ったチーム全員で、一緒に何かを創っていくのだ、という意識に変わりました。実際に現場で感じているのは、一般的なビジネススキルやプログラミング能力などの技術スキルが高いと思える人材が、日本と比べてもかなり多いということです。従来のように、日本の品質にどれだけ近づけられるかではなく、もっとベトナムの良さや特徴を活かしながら、より高いクオリティの開発ができるのではないかと思うようになりました。

あとは自分のモチベーションの部分にも変化を感じましたね。ベトナムは国民全体の平均年齢も26歳ぐらいでとても若く、経済も勢いがあります。現地のエンジニアもみんな活気がある若者たちなので「新しいことをやりたい」「自分は上を目指す」「もっと成功したい」といった前のめりなエネルギーにあふれ、イノベーティブな提案も貪欲に次々と出てきます。自分もそれに負けまいと刺激されて高いモチベーションを維持できているので、プラスの相乗効果を生み出していると思います。

大切なのは当事者意識を持ち続けること

編集部:最後に、海老原様が考えるプロジェクトを成功に導く秘訣についてお聞かせください。

海老原:重要なのは、同じオフショア開発メンバーとして「このプロジェクトを絶対にやりきるんだ、上手くいかせるのは自分なのだ」という意識を全員で持つことです。
これはオフショア開発についても同様で、「オフショアを“管理する”」「オフショアを“使う”」など日本側とベトナム側で線引きをして、外部からの目線で見ているとなにも変わりません。プロジェクトを成功させるのに何が必要なのかを必死で考えて、課題を見つけたら役割に線を引かずに自分が動く、これをみんなでやり続けることではないかと思います。

さまざまな外的要因があるので、プロジェクトの成功という定義付けは難しいものですが、そこには必ずなんらかの答えや着地点が存在します。そうした中で、その答えや着地点を自分たちの手でつかむのだという当事者意識を全員で持ち続ければ、確実に全員が納得するゴールが見つかると思います。

編集部:ありがとうございました。

提供:リクルートテクノロジーズ